尾道の坂の上にある築100年の茶園【さえん】(別荘建築)を尾道水道が望めるオープンスペースへとして再生しました。
日本遺産にもなった絶景の箱庭的空間を歴史あるお寺や身近な自然とともにお楽しみください。
- みはらし亭について(再生までのプロセス、茶園文化のこと)
海を背に石段を300段少し登り、千光寺まであともう一歩という崖の上に建つ「みはらし亭」は、大正10年に建てられた絶景が望める別荘建築。戦後一時期旅館として活用された後、30年近く空き家になっていました。
空きPとみはらし亭との出会いは、2009年から事業委託を受けた「尾道市空き家バンク」の最初の提供物件の一つとしてでした。
その頃は、まだボランティアを中心として活動していたので、まさかそんな大物物件に自分たちが着手する日が来ようとは想像だにしていませんでした。
しかし、坂の町の観光のメインルートのど真ん中、千光寺の真下に位置する絶景のこの建物が、歴史的にも建築的にも重要なものであることは、一目瞭然ですが、こんな崖っぷちにそそり立つ古い大きな建物の再生に一体どのくらいの費用がかかるのだろう、誰か里親はいないものか…と当時は他人事のように考えていました。もったいないのは分かってはいましたが、ない袖は触れません。
何人かの移住希望者が見学に来ましたが、さすがに大物過ぎて、実際に動く人は現れませんでした。ご高齢の大家さんと何度もやり取りを繰り返し、活用プランを考えるワークショップや模型づくりも行いました。
文化度の高い尾道が大好きな大家さんの強い思いを受け、実測し、見積をとって何度も検討し、先に始めた商店街の町屋のゲストハウスで大型物件の再生と活用に自身をつけ、資金繰りもなんとか目処が立った2015年に、我々自身で再生活用への第一歩を踏み出しました。
そして、築100年の別荘建築の再生とともに同時に着手したのが、尾道の茶園【さえん】文化の研究です。
「茶園」は一般的には茶畑のことを言うそうですが、尾道では古くからお茶を楽しんだり、客人をもてなしたりする別荘のことをこう呼びました。港町として栄華を極めた江戸時代から昭和初期にかけて、時代時代の豪商や名士が眺めのいい坂の上にこぞって意匠を凝らした別荘建築を建て、山と海がおりなす立体的な空間の中に尾道独特の茶園文化が花開きました。
既に取り壊されたり、長く空き家になってしまっている茶園建築もたくさんありますが、尾道三山には江戸、明治、大正、昭和とそれぞれの時代を代表する様式の優雅な建物がまだまだ多く残されています。
<みはらし亭の歴史>
大正10年:尾道の水尾町で折箱製造業で財を成した石井譽一が千光寺の敷地を
譲り受け、絶景の坂の上に茶園を建設
昭和30年:現所有者の松岡氏の先代が購入
昭和44年:旅館として本格営業開始
平成21年:尾道市空き家バンクへ登録
平成24年:NPO法人尾道空き家再生プロジェクトと賃貸契約
平成25年:登録文化財に指定
平成27年:1月、大改修工事着工
3月、「尾道空き家再生!春合宿」の開催
9月、「尾道空き家再生!夏合宿」の開催
平成28年:春、完成
尾道ゲストハウス「みはらし亭」として活用開始